特許申請経験

ものづくりの仕事をしていると、何か自分たちのオリジナル商品って作れないかなぁと常々思ってしまいます。


たまたま病院勤務をしている管理人の妻から病院で使う針抜きの補助具を作れないか?という相談を受け、ボランティアのつもりで始めた活動が特許申請に至ったので、ちょこっと紹介をしてみます。


特許申請って何だか難しそうだし、費用もかかりそうだし・・・


そうやって尻込みして、くすぶっている町工場の方々の参考・後押しになればいいかなぁと思います。



特許申請したオリジナルパーツ

【抜針補助具】

病院において、従来、がん化学療法や高カロリー輸液の投与は、皮膚内に埋め込まれた皮下埋没型中心静脈ポート(CVポート)が使われ、このCVポートに専用針であるヒューバー針を刺し込んで行われます。

その理由は、抗がん剤投与などは何度も薬剤を血管内に投入する必要があるのですが、何度も何度も針を血管に抜き差しすると、血管がボロボロになってしまうので、CVポートを皮下に埋め込み利用することで血管の損傷を最小限に抑えているのです。


このCVポートにおいて、ヒューバー針を抜き差しする部分はセプタムと呼ばれ、シリコンゴムで構成されています。

メーカーにもよりますが、今回相談を受けたのは東レメディカル製の「ウィングドシュアカン」と呼ばれるヒューバー針が抜針する時に抜けにくい(抜くのに少し力がいる)とのことで、これは後でメーカーの方からお話しを聞くところによると、あえて抜けにくくしているということでした。

簡単に針が抜けて液漏れしてしまうのを防ぐためらしいです。

化学療法サポートのサイトより引用 (http://chemo-support.jp/medical-apparatus/cvport.html)


ヒューバー針の抜針作業は、医師や看護師のみならず在宅医療の場合は患者自身や患者の家族も行うことがあります。

その時に、どうしても針が抜けにくいと、針を抜いた拍子に誤って指やその他のところに針を刺してしまう、いわゆる針刺し事故が起こってしまう可能性が高いというのが今回の相談でした。


そこで、針を抜く時に安全に簡単に使える補助具を作ることはできないだろうかと考察することになったのです。

それが、特許申請するに至った抜針補助具です。



3Dプリンターを使った試作

まず、初めに3Dプリンターによる造形および、構造考察にご協力いただいた片野氏には改めてお礼申し上げます。

アイデアが浮かんでもなかなか形にするのは苦労するのが世の常。

ましてや、金属を削って試作品を作るとなるとかなりの時間と労力が必要になるので、3Dプリンターでの造形をご協力頂けたのは幸いでした。


たまたま、管理人が今回のように針抜きの補助具の開発ができないか考えているという話をしたところ、ホビー用ではありますが個人で3Dプリンターを所有しており、協力してくださるとのことでお言葉に甘えさせて頂きました。



今回の抜針補助具の構造において重視するポイントは以下の通りです。

・抜針作業が片手でもできる(軽い力でも抜ける)

・抜いた針先が指などの皮膚に刺さらないように保護する

・コストが安価に抑えられるようにする


まず、片手で簡単に針を抜くを第一のコンセプトにしました。


東レメディカル製のヒューバー針「ウィングドシュアカン」のカタログを見てもらうと以下の通り。



通常、補助具などを使用しない場合はウィングドシュアカンの羽の部分をつまんでグッと針をCVポートから引き抜きます。

その時、針は真っ直ぐ上に引き抜くわけではなく、ちょっと手前方向に引いて抜く感じです。


これを、もっと楽に抜くためには針を真上に引き抜けばいいのでは?と思い構造を考えました。

また、抜いた針が誰かに刺さる針刺し事故は感染症などの二次被害を引き起こす可能性もありますので、針先の保護は絶対です。

従って、考案した抜針補助具では抜いた針先を保護するような構造にしました。


あとは、製造コストをいかに抑えるかが問題になります。

基本的にはディスポーザブル(使い捨て)で考えていましたので、注射器などに使用されるポリプロピレンなどの樹脂を利用し、金型で大量生産できるように展開できるような構造を考えていました。


実はこの「大量生産」という概念はもう少し後の段階で考えるようになりました。

そもそも、ボランティアとして無償提供し有効に使ってもらえたらいいなぁくらいのスタンスで勝手に動いていましたから。




こちらが実際に3Dプリンターで造形してもらった試作品です。

これだけでは、どうやって使うか分からないと思いますが、実際に医師に触ってもらうと、結構評判が良かったんです。


もちろん、ちゃんと針を安全に抜くことができます。


モデルは東レメディカルのウィングドシュアカン用に設計してあります。




簡易試作品の見解

数か月の間、あれこれと構造の改定を繰り返しながらそこそこ納得のいく形までもっていき、3Dプリンターで造形した簡易の試作品を実際に病院の医師に見てもらい、見解を頂くことになりました。


ご協力頂いたのは、奈良県立医科大学付属病院(http://www.naramed-u.ac.jp/hospital/)です。


この時点では、商品化することなどは毛頭考えていませんでしたが、1つの大きな壁にぶち当たることになります。

それが法律。

医療の現場で実際に使ってもらおうと思うと、製品をつくり譲渡するにしても医療機器製造許可・販売など国の認可を得なければいけません。

弊社のメイン事業は機械部品の加工ですから、分野が違います。


そこで、病院の医師に相談し、東レメディカルの方を紹介してもらい、東レから製品を出してもらうことができないか打診することにしました。



特許申請はプロに任せるのが1番です

東レメディカルの方とお会いするまでにはかなりの時間を費やし、構造の模索を続けた経緯がありますので折角ならば特許がとれないものかと考えるようになりました。


特許については、色々な方に聞いて回りましたが、特許なんてほとんど意味がないという意見も多く、どうするべきか悩みましたが又とない経験ができるチャンスかもしれないと前向きに捉え、特許申請に踏み切ることにしました。


とは言っても、管理人を含め弊社の者は特許申請などしたことがありません。

どのようにすればいいのかさっぱりです。

やっぱり、こういう時こそプロに任せるのが一番だ!ということで今回の案件はプロの弁理士さんにお願いしました。



今回、お世話になったのが ミライエ国際特許事務所


弁理士の植田吉伸様には大変丁寧に対応して頂き感謝しております。


事務所は大阪市中央区平野町3-1-8プロスパー平野町ビル805にありますので、弊社を含む関西圏の会社には相談に行きやすいですよ。

電機や機械の分野にも対応して頂けるので、町工場の特許申請には強い味方になるかと思います。





特許申請で思ったこと

実は、特許申請に当たり特別苦労した点はなかったような気がします。

と言いますのも、全て弁理士の植田様が変わりにやってくださいましたから。


弊社が揃える資料は、発案したものの仕組みや構造がわかるような資料を作ることと、植田様に直接説明することくらい。

本当に便利ですね。


ただ、どうしても発案したものが特許申請に耐えうるものかどうかの判断は難しく、中には自信がないなぁと思っている方もいるのではないでしょうか?

その時こそ、特許事務所のドアを叩いてみましょう。

色々と参考になるアドバイスも頂けます。




製品化には至らなかったが良い経験ができた

今回、発案し東レメディカルに商品化の提案を申し上げる機会まで得られましたが、残念ながら製品化にむけた動きはしてもらえませんでした。

病院の医師からは一定の評価を頂けたので、実用化し使用してもらえたら良かったのですが仕方がありません。


東レに限らず、ヒューバー針を販売しているメーカーの現在の市場の動きは針そのものに安全性を付加した商品を全面的に普及させたいネライがあるとのことでした。

確かに、ヒューバー針そのものが安全に抜針できるものであれば申し分ありません。


ただ、何故、安全装置付きのヒューバー針を使用していない医療機関があるのかという点に目を向けると、コストの問題が挙がってきます。

どうしても、安全装置付きのヒューバー針はそうでない普通のヒューバー針に比べて、単価が高くなります。

製造コストなどが上がるため避けられませんが、経営状態がさほど良くない医療機関ではコストの問題が重くのしかかってきます。


そこを救済できたらいいのにと勝手ながら思い、考察してきました。

弊社でも特許申請という、未経験の活動ができたのは1つの収穫です。


実際に植田様に出願して頂いた特許申請書は こちら 

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